1. そもそもHDDとSSDってどう違うの?
HDD(ハードディスク)とSSD(ソリッドステートドライブ)は、どちらもデータを保存するための“記憶装置”ですが、仕組みが大きく違います。HDDは中に磁気ディスクが入っていて、それを回転させながらデータを読み書きします。回転するため少し音がしたり、衝撃に弱いのが特徴。一方SSDはメモリチップにデータを保存するため動く部品がありません。そのため静かで衝撃に強く、動作も素早いのが魅力です。パソコンを買い替えたときに「SSD搭載!起動が速い!」とアピールされていることがありますが、あれがまさにSSDのメリット。どちらもNASで使えるのですが、“何を重視するか”で選ぶべきストレージは大きく変わってきます。
2. HDDのメリット:とにかく大容量でコスパが良い
HDDは長年使われ続けている信頼のあるストレージで、「とにかく大容量を安く確保したい」という人に向いています。たとえば4TB・8TB・12TBといった大容量モデルが比較的手頃な価格で手に入るのはHDDの強み。写真や動画の量が増え続ける家庭では、NASに求める条件として“容量の大きさ”が最優先になることが多いため、HDDはとても現実的な選択です。また、NAS向けに最適化されたHDD(WD RedやSeagate IronWolfなど)は、24時間稼働にも耐え、故障率も低く抑えられています。動作音は多少ありますが、棚にしまってしまえば気にならないレベル。容量と値段のバランスを考えると、家庭用NASでは最も一般的な選択肢です。
3. SSDのメリット:静か、速い、衝撃に強い
SSDは“静かで速い”というのが最大の魅力。HDDのような回転音がなく、データの読み書きも圧倒的にスピーディーです。NASを動画編集の素材置き場として使いたい、読み込み速度を重視したい、写真のプレビューを高速化したいという場合はSSDに大きな利点があります。また、動作部品がないため衝撃や振動にも強く、耐久性の面でも安心。ただし、大容量になるほど価格が一気に高くなるため、8TBや12TBのSSDを複数台そろえるのは現実的ではありません。家庭でNASを使う場合、静音性と快適さを求める人には魅力的ですが、「大量データを長く保存したい」という用途ではコスト面がハードルになることがあります。
4. NASではどちらが主流?実はHDDがほぼ標準
NASにおいては、現在も圧倒的にHDDが主流。理由はシンプルで、「大容量を安く用意できるから」。NASは写真・動画・PCのバックアップなど、どんどん増えるデータを長期間保存する用途が多いため、容量当たりのコストが重要になります。SSDは速いものの、容量を大きくすると価格が跳ね上がるため、家庭用NASで複数台を運用するには少しハードルが高いのが現状です。また、NAS向けの専用SSDは増えてきましたが、HDD向けのものほどコスパは良くありません。一方で、SSDはキャッシュ用途としてNASに搭載されることがあります。これは、よく使うデータをSSDに一時保存し、全体を高速化する仕組み。とはいえ“メインの保存先”としてはHDDが一般的です。
5. どっちを選ぶべき?家庭向けのおすすめ構成
家庭用NASでまずおすすめなのは HDDをメインにする構成 です。写真・動画・バックアップなど長期保存するデータが多い場合、HDDの大容量・低コストというメリットは非常に大きく、長い目で見てもっとも扱いやすくなります。ただし「なるべく静かでスピーディーなNASにしたい」「動画編集素材を直接NASから扱いたい」という場合はSSDを選ぶ価値があります。さらに、HDDをメインにしつつSSDを“キャッシュ”として使う構成もおすすめです。これはHDDの弱点(アクセス速度)を補えるため、普段よく使うデータの体感速度が上がります。結局のところ、保存目的ならHDD、快適さを求めるならSSD、両方の良さを取りたいならHDD+SSDキャッシュという選択が家庭では現実的です。
6. 初心者が知っておきたい注意点:速度より大切なのは“安全性”
HDDとSSDのどちらが良いかを考える際につい忘れがちなのが、「どちらを使ってもデータが消える可能性はゼロではない」ということ。HDDは物理的な故障があり、SSDも長期間書き込み続けると寿命がきます。そのため、どちらを使ってもバックアップは必須。RAID1 や SHR のような構成で“冗長化(データを複製して守る)”し、さらに別の場所へのバックアップ(外付けHDDやクラウド)も組み合わせることで安心して長期間使えるようになります。速度や価格も大切ですが、NASにおいて一番重視すべきは「安心してデータを預けられる環境かどうか」。HDDかSSDかの比較はあくまで入口であり、最終的には安全な運用を意識することが大切です。
