NAS用HDDを調べていると、「SMR」「CMR」という言葉を見かけます。スペック表に書かれていても、記録方式の違いが実際の使用感にどう影響するのかは分かりにくいものです。

筆者も以前はそこまで気にしていませんでした。実際にRAID構成のNASでWD Red 3TB(SMR)を約2年間使用していましたが、ファイルが消えたりNASが落ちたりするような不具合は一度も起きていなかったからです。

ただ、ずっと気になっていたことがあります。深夜、PCもスマホも触っていない時間帯にも、NASからカリカリというHDDの動作音が聞こえてくるのです。不思議には思っていましたが、実害がないのでそのまま2年近く使い続けていました。

後になって調べていくと、その原因がSMRという記録方式の特性にあることが分かり、最終的にWD Red Plus(CMR)へ交換しました。結果、深夜の動作音は完全になくなりました。

この記事では、SMRとCMRの違いを基本から解説しながら、「NASの動作音がなぜ止まらないのか」という疑問について、この実体験を交えて整理していきます。

SMRとCMRの違いとは?仕組みの基本

SMRとCMRは、HDDがデータを書き込む方式の違いです。同じ容量のHDDでも内部の記録方法が異なるため、得意な用途・不得意な用途が分かれます。

CMR(従来型記録方式)の仕組みとメリット

CMR HDDのトラック構造

CMR(Conventional Magnetic Recording)は、従来から使われている記録方式です。データを書き込むトラック同士に十分な間隔が確保されているため、既存データへの影響を気にせずランダムな書き換えができます。

  • ランダム書き込みに強い
  • RAID環境との相性が良い
  • リビルド(再構築)時の負荷にも強い
  • NAS向け製品で広く採用されている

NASのように24時間稼働し、複数のディスクでデータを管理する環境では、CMRが基本の選択肢になります。

SMR(瓦書き記録方式)の仕組みとメリット・デメリット

SMR HDDのトラック構造

SMR(Shingled Magnetic Recording)は、屋根瓦のようにトラックを重ねて記録する方式です。同じプラッタ面積でも高密度にデータを保存できるため、低コストで大容量化しやすいというメリットがあります。

  • 容量単価が安い
  • 高密度記録が可能
  • データ保管・アーカイブ用途との相性が良い

一方で、トラックが重なっているため、既存データの一部を書き換える際には周辺のトラックも含めて整理し直す必要が出てきます。この特性が、NAS環境では後から問題として現れることがあります。

なぜSMRは深夜にも動作音が止まらないのか

SMR HDDの書き込み処理フロー

SMR方式では、データを書き換えるたびに内部で再配置・整理処理が発生することがあります。SSDのガベージコレクションに近い考え方ですが、HDDの場合は物理的にヘッドを動かす処理になるため、カリカリというシーク音として聞こえてきます。

NAS × SMRでHDDの処理が止まらない理由

ユーザーが何も操作していなくても、過去に蓄積された書き込みの整理作業がバックグラウンドで行われることがあり、その結果として深夜にも動作音が発生し続けます。

厄介なのは、この状態でもNAS自体は普通に使えてしまうことです。ファイルが消えるわけでもなく、エラー通知が出るわけでもありません。そのため「なんとなく夜中に音がしているな」と思いながら、そのまま放置しやすいのです。

筆者自身も、まさにこの状態でした。

【実体験】RAID構成のNASで2年間SMRを使い続けた結果

筆者が使用していたのはWD Red 3TBです。RAID構成のNASで約2年間使用しており、その間に大きなトラブルが起きたことはありませんでした。

ただ、以前から気になっていることがありました。深夜になり、PCもスマホも触っていない時間帯でも、NASからカリカリというHDDの動作音が聞こえてくるのです。

「何の処理が動いているんだろう」と不思議には思っていましたが、ファイルの破損や速度低下のような実害は出ていなかったため、そのまま気にせず使い続けていました。

その後、NASの速度を測ったり、使用していたHDDの型番を調べたりする中で、WD Red 3TBがSMR方式であることを知りました。さらに調べていくと、RAID環境ではSMR特有の内部再配置処理が継続的に発生しやすいということが分かりました。深夜の動作音は、これが原因だったのです。

そこで、WD Red Plus(CMR)へ交換しました。

交換後にまず気づいたのは、深夜の動作音が完全になくなったことです。以前は静かな部屋だとNASのカリカリ音が聞こえていましたが、それがなくなりました。

転送速度についても改善があり、おおよそ100Mbps程度まで向上しました。速度計測のキャプチャは残していませんが、日常的なファイル操作の感覚としても、以前より明らかに快適になりました。

NASでSMRを使うとどうなるか(リスクの整理)

ここからは、筆者の体験ではなく一般的に言われている内容として整理します。

  • RAIDリビルド(再構築)時に処理時間が長くなる場合がある
  • ランダム書き込み性能が低下しやすい
  • 大量の小ファイル更新が続く環境に向かない
  • NASメーカーによってはSMRを非推奨としている場合がある

特にRAIDを利用する場合は、まず家庭用NASのRAID構成の選び方を理解した上でHDDを選ぶと、後からの後悔が少なくなります。

写真管理やバックアップ用途でNASを長期間運用するつもりなら、初期費用が多少高くてもCMRを選んでおいたほうが、結果的に手間がかからないと感じています。

NAS向けHDDの選び方(CMRを選ぶには)

NAS向けとして定番になっているシリーズは、以下のようなものです。

シリーズメーカー特徴
WD Red PlusWestern DigitalCMR採用の定番モデル
IronWolfSeagateNAS向け専用シリーズ
N300Toshiba高耐久モデルとして人気

重要なのはシリーズ名だけで判断しないことです。同じシリーズ名でも、容量や世代によって記録方式が異なる場合があるため、購入前に型番から記録方式を確認するのが確実です。

NAS本体選びについてはNASは結局どれがいい?Synology・QNAP・UGREENを徹底比較もあわせて参考にしてください。容量選びで迷っている場合はMacユーザーのNAS容量選び|4TBと8TBの失敗しない決め方もご覧ください。

FAQ(よくある質問)

Q1. SMRは買ってはいけないのでしょうか?

用途次第です。バックアップ保管やアーカイブ用途であれば、SMRでも問題なく使われています。ただしRAID構成のNAS用途では、CMRを選んだほうが安心です。

Q2. SMRとCMRの見分け方はありますか?

メーカーの仕様表や製品ページで確認するのが確実です。購入前に「型番+CMR」「型番+SMR」で検索する習慣をつけておくと安心です。

Q3. NAS用HDDと通常のHDDは何が違いますか?

NAS向けHDDは、24時間稼働や振動環境を考慮した設計になっているのが一般的です。複数台でのRAID運用を前提としたファームウェアが採用されていることもあります。

Q4. 動作音が止まらない場合は、必ずSMRが原因ですか?

必ずしもそうとは限りません。バックアップ処理やクラウド同期など、他の要因で動作音が続くこともあります。ただし使用しているHDDがSMRの場合は、原因候補のひとつとして確認してみる価値があります。

まとめ

Synology NASとHDD

SMRとCMRの違いは、単なるスペック表上の話ではありません。

筆者の場合、RAID構成のNASでWD Red 3TB(SMR)を約2年間使い続けた結果、深夜にもHDDの動作音が発生し続けていました。当初は異常だとは思っていませんでしたが、調べていく中でSMR方式の特性を知り、WD Red Plus(CMR)へ交換しました。

交換後は深夜のカリカリ音がなくなり、転送速度も改善しました。

もし「夜中にNASの音が止まらない」「なぜかHDDが常に動いている気がする」と感じているなら、一度HDDの型番と記録方式を確認してみてください。

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